センチネル(見張り)リンパ節生検法について
乳腺の組織にはリンパ管がネットワーク状に張りめぐらされており、乳腺内に発生した異物などはこうしたリンパ管を通じて、腋窩にある見張りリンパ節(センチネルリンパ節)に注ぎこまれます。ここからさらにリンパ節がネットワーク状に分布されており(腋窩リンパ節)、生体にとっての異物が処理されていきます。このため乳房に発生したがん細胞もリンパ管を通じてセンチネルリンパ節に集められ、さらにそこから周囲のリンパ節にも運ばれ処理されます。リンパ節ががん細胞を処理できれば問題ありませんが、処理しきれなければ転移が成立します(リンパ節転移)。このためセンチネルリンパ節に転移があれば他のリンパ節にも転移がある可能性が高く、センチネルリンパ節に転移がなければ他のリンパ節はまず大丈夫と考えられます。このような考え方は、【センチネルリンパ節の仮説】と呼ばれ、かなり真実に近いと思われています。 今日の乳がん治療の論点のひとつに腋窩リンパ節をどのように取り扱うかという問題があります。
○腋窩リンパ節転移の有無の診断および治療(局所コントロール)のためには最も確実な伝統的方法です。
×合併症として、上肢のむくみ、腋の違和感、感覚低下などが一定の頻度で起こります。他覚的な上肢のむくみの発生頻度は10〜20%程度とされています。
○ 後遺症が非常に少ない方法です。腕のむくみはまず起きないとされています。
× 診断、治療面でやや不十分な可能性があり、海外の大規模な臨床試験で安全性を確認中です。
A;対象となる方の条件
A−1 あらかじめ腋窩を触診、超音波、CT等で検索しリンパ節転移の疑いがないことが第一条件となります。
A−2 しこりがかなり大きい人の場合はリンパ節に転移している可能性が高いため(検査前確率が高いという表現をします)除外したほうが無難とされています。
A−3 乳房温存手術、乳房全摘手術に関わらず、センチネルリンパ節生検の対象としています。
センチネルリンパ節生検法(RIと色素法の併用の場合)
前日にRIを乳輪部に注入し、リンフォシンチグラフィーの撮影を行います。手術時に色素を乳輪部または腫瘍の周囲に注入し、色素で染まるリンパ節(1〜2個/センチネルリンパ節)を見つけ切除します. 同時にガンマプローベで放射性物質が取り込まれていることを確認します。切除したリンパ節は迅速病理組織検査を行う場合と、そのままホルマリン固定する場合があります。
術中迅速診断にてリンパ節転移が確認されれば、腋窩リンパ節郭清(レベル1,2)に切りかえます
切除されたリンパ節は術後さらに永久標本で検査を行い(2mm全割)転移の有無を詳しく検査します。必要に応じて免疫染色を追加します。その結果リンパ節に転移が発見された場合は、後日再手術による腋窩リンパ節郭清(レベル1,2)または腋窩の放射線照射を行います。
以上のようにセンチネルリンパ節生検法は従来の手術と比較して後遺症の少ない方法ですが、安全性が必ずしも確立されていない点や、再手術の可能性などの問題点があります。
【参考データ;2000年4月から2005年8月までに病期T〜V期の乳癌235例に対して施行。SNの同定率は95.3%でSN平均1.2個 SP平均1.9個を切除。21.7%(51例)に腋窩転移を認め、陽性率はT期16.4%(25/152) UA期 32.1%( 25/78) UB期(1/2) VB期(0/3)であった。陽性例51例のうち46例はSN陽性で67%はSNのみの転移であった。腋窩陰性と評価して非郭清で経過観察した184例(平均観察期間22.4ヶ月)の腋窩再発は1例(0.5%)であった〜これはJR東京総合病院でのデータです】