タモキシフェン(ノルバデックス)内服と子宮体癌のリスクについて

2001年5月にタモキシフェン(商品名ノルバデックス)の内服に関してマスコミ報道がなされ、しばしば質問を受けますので論点を整理しておきます。

@閉経後の方の場合、タモキシフェンの長期内服により、子宮体癌のリスクは年間約0.2%増加します。このことは子宮体癌にかかる人の割合がトータルで2%程度増加し、子宮体癌死亡が最終的に0.5%程度増加することを意味します。タモキシフェンの効果により乳癌死亡が5〜10%減少するため、総合的に判断すると、浸潤性乳癌でホルモン受容体陽性の患者さんにとって、ホルモン剤を内服する方が圧倒的によりよい結果をもたらすと言えます。

A閉経前の方の場合、子宮体癌が増加するという明らかなデータはなく、あまり問題ないと考えられています。

B子宮体癌検診について:先日、日本産婦人科学会が、子宮体癌検診を勧めるガイドラインを発表しましたが、このガイドラインには多くの問題点があり、修正される必要があります。現在、子宮体癌の有効な検診法がないため、無症状の方の定期検診は勧められません。我々は日本産婦人科学会のガイドラインの修正を求める論文を、発表しました。

【Screening recommendation for women taking tamoxifen】  Lancet 2001,358,1018; Hidetaka Kawabata, Takafumi Ueno

タモキシフェン内服中の患者さんへ

@不正出血のない、無症状の方が定期的に子宮体癌の定期検診を受ける必要はありません。

Aただし、通常の方と同様に子宮頚癌の検診は1〜3年毎に推奨されます。

B不正出血が続く場合は、婦人科を受診して検査(超音波検査、生検による病理検査)を受けてください。その際、乳癌にてタモキシフェン内服中と自己申告してください。(当院の婦人科でも、近くの婦人科でも構いません。また特に検査のみであれば我々の紹介状は特に必要ないと思います)


ホルモン療法

乳癌患者さんの約3分の1は、エストロゲン依存性で、このためエストロゲンを抑制することで、がんは抑制されます。

エストロゲンの働きは通常2つの方法(薬理学的な過程)で抑えることができます

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1エストロゲンのがんに対する働きを抑える方法 腫瘍(がん細胞)内のエストロゲン受容体を干渉する方法 合成抗エストロゲン剤ノルバデックス(タモキシフェン)を内服する

天然の抗エストロゲン剤を用いる(メカニズムは十分解明されていない)  黄体ホルモン ヒスロンH を内服する

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2エストロゲンの血中濃度、組織内濃度を下げる方法(エストロゲンの合成を阻害する)

閉経前の場合 卵巣機能を抑制する方法  ゾラデックス、リュープリン(LH-RHアナログ)を皮下注射する

閉経後の場合 末梢組織(脂肪、肝臓、筋肉、脳)にあるアロマターゼ(エストロゲンを合成する酵素)を阻害する方法  アリミデックス、アフェマを内服する

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各薬剤の代表的な副作用 

ノルバデックス  子宮体癌の増加

ゾラデックス、リュープリン 閉経症状(更年期障害)

アリミデックス、アフェマ 消化器症状(気持ち悪い等)

ヒスロンH 体重増加

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アロマターゼ阻害剤:アリミデックスについて

対象:閉経後の患者さんでホルモン受容体が陽性(ER,PgRの少なくともどちらかが陽性)であることが必要です。

投与法:錠剤を1日1錠内服(朝食後)

   注)内服は1日のうちいつでも特に支障ありませんが、朝食後ということにしてください。また2〜3日のみ忘れたり、間違って1日2〜3錠飲んでも特に支障はありませんが、なるべく規則正しく内服しましょう。

内服期間:術後補助療法の場合、再発がない限り5年間の内服が原則となります。

作用のメカニズム:乳腺の細胞は女性ホルモン(エストロゲン)に依存して増殖したり、退縮したりします。乳がん細胞も乳腺の細胞由来であるため、この性質が多くの場合残っています。閉経前は卵巣よりエストロゲンが分泌されますが、閉経後の場合は副腎由来のアンドロゲン(男性ホルモン)がアロマターゼという酵素により変換されてエストロゲンが作られます。このアロマターゼという酵素を阻害して、エストロゲンの産生を抑制するのがアロマターゼ阻害剤です。

アロマターゼ阻害剤には非ストロイド系とステロイド系があります。またアロマターゼに対する選択性の違いにより第一世代、第二世代、第三世代と分類され、第三世代のアロマターゼ阻害剤の方が旧世代のものより薬剤としての効率がいいため副作用が少なくなります。日本で使用可能なものにアフェマ、アリミデックス、アロマシンがあり、これらはすべて内服薬です。

     非ステロイド系                     ステロイド系

第一世代

第二世代 ファドロゾール(商品名:アフェマ)

第三世代 アナストロゾール(商品名:アリミデックス)     エキセメスタン(商品名:アロマシン)

海外の大規模なデータでは、アリミデックスの方がノルバデックス(タモキシフェン)より乳がんの再発率が低いと報告されています。副作用に関してもノルバデックスでたまに経験するほてり、静脈血栓、一過性脳虚血発作、性器出血、子宮体がんの発現はアリミデックスで有意に減少していました。

骨折のリスクがやや上昇すると言われています。このためこれまで標準薬と考えられていたノルバデックスにかわりアリミデックスが使用されるケースが増えてきています。ただしアリミデックスは新しい薬のため10年単位のデータがなく、この面でまだ若干の不安が残っています。

効果:術後治療の場合:乳がんの再発率を低下させ、乳がん術後の生存率を向上させる

再発、進行がんの場合: 症状改善、延命効果がある。

副作用: 関節炎、筋肉痛、骨粗しょう症の増加(ただしタモキシフェンでみられた子宮がん、不正出血、おりもの等の増加は認められなかった。)



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