1乳癌再発とは
乳癌再発は、骨、肝臓、肺、脳、胸壁、リンパ節、温存乳房などにおきる。温存乳房や胸壁におきた再発を局所再発、リンパ節の再発を領域再発、骨、肝臓、肺、脳などにおきた再発を全身再発あるいは遠隔転移という。
局所再発、領域再発は、治療により根治可能なことがあるが、遠隔転移をきたした場合、治癒することはほぼ無いと考えられている。遠隔転移後の平均生存期間は1.5ー2年である。しかし2ー3%は5年以上生存する可能性があり、稀には10年以上長期生存の報告もある。初回治療から転移までの期間が長い場合、ホルモン受容体が陽性の場合、骨転移の場合では、転移後の生存期間が長い傾向がある。転移の75%は初回治療後(手術後)5年以内におきるが、10年ー15年後の転移もある。
2乳癌術後のフォローアップ
根治可能な温存乳房再発や胸壁再発には、早期発見の意義が考えられているが、遠隔転移早期発見の意義は現在認められていない。画像診断に限界があるため転移を確実に早期に発見ことが困難であることと、例え早期に転移が発見できても、治癒させる治療法が無いからである。癌治療において最も権威のあるアメリカ臨床腫瘍学会のガイドラインによると、乳癌術後の検診は医師の診察、問診が中心であり、腫瘍マーカーの定期的測定や骨シンチ、胸部CT、肝臓エコーなどの定期検査は勧められないとされている。これらの検査は転移を疑わせる臨床所見がある時に初めておこなうべきと考えられている。
3再発治療の原則
局所再発、領域再発には手術治療や放射線照射がおこなわれる。その後の全身治療の必要性には賛否両論がある。遠隔転移に対しては、化学療法(抗癌剤)や内分泌治療などの全身治療が原則で手術がおこなわれることは稀である。遠隔転移に対する治療は症状緩和と延命目的であり、治癒を期待するものではない。従って治療もなるべく副作用の少ないものを優先する。全身治療では転移による臨床症状がなく、内分泌療法が有効な可能性がある場合(ホルモン受容体が陰性でない等)には、まず内分泌療法が試される。閉経前では、タモキシフェン、LHーRHアナログ、プロゲステロンの3剤が順に使用される。
単剤づつ用い、最初の薬が効かなくなった場合に次の薬に変更するのが原則である。内分泌療法の場合には、最初の薬が有効だった場合には、次の薬も有効なことが多い。閉経後ではタモキシフェン、ファドロゾール、プロゲステロンの3剤が使用される。抗癌剤とは併用しないのが原則である。内分泌療法が無効になった場合や、ホルモン受容体が陰性等で効果が期待できない場合、抗癌剤治療がおこなわれる。約60%で症状の軽快が認められ、10%では一旦は転移巣が消失する。
しかし有効期間は6-12カ月のことが多い。使用される化学療法に決められたものは無いが、一般的にはCMFやCAFが最初に用いられる。CAFの方が奏功率が高く延命期間もやや長い傾向にあるが、大差はなく副作用の面からCMFも使用される。これらの抗癌剤が効かなくなった場合にはセカンドラインの薬剤としてタキソール系が用いられる。遠隔転移の治癒を目的として末梢血幹細胞移殖を用いた超大量化学療法が海外で盛んにおこなわれていたが、臨床試験の途中結果が1999年発表され、今の所成績は良くなく、研究以外の目的ではおこなうべきでないとされている。
4化学療法の期間
遠隔転移に対する化学療法には平均約6カ月の延命効果があると考えられている。治療開始後、少なくとも3-6カ月は施行すべきとされる。症状が改善した場合に、その後も引き続き抗癌剤治療を継続するのが良いか、治療を一旦休止しても良いのかは議論のある所である。どちらにしても最終的な生存期間には差がないとされる。
5局所治療がおこなわれる遠隔転移
遠隔転移でも脳転移の場合は放射線治療が優先される。骨転移でも照射がおこなわれることが多い。大腿骨転移などで骨折の危険が大きい場合、予防的な手術をおこなうこともある。骨転移には、ビスフォスフォネートという骨破壊抑制剤を点滴投与することで、骨破壊の進行を遅らせることもある。(日本では保険適応となってない)